food for the Brainの科学諮問委員会は、認知症やアルツハイマー病のリスクを高めるとされる食事や生活習慣の分野における世界中の専門家で構成されています。メタ分析（研究の研究）を詳細に解析し、特定のリスク要因にどの程度のリスクが関連しているかを割り当て、さらに重要なのは、リスクの低減に向けた変更がどのように効果を発揮するか、その実証に基づいてリスクを低減できるかどうか、実施の容易さも評価しました。そして、認知症やアルツハイマー病に関連するエビデンスに基づいた修正可能なリスク要因を特定し対処するために、8つの領域（ドメイン）を定義しました。それらは以下の通りです：

低糖質低ＧＬ食 – 低GI（グリセミック負荷）の食事を摂取する
脳の脂肪 – オメガ３、リン脂質、ビタミンDを摂取する
ビタミンB群 – ビタミンB群でホモシステイン値を低く保つ
抗酸化食– 抗老化作用のある抗酸化物質やポリフェノールを摂取する
健康な腸 – 健康な腸は健康な脳を作る
活動的な身体 – 運動し、身体を活発に保つ
活発な思考 – 社会的、知的に活発でいる
睡眠 & 穏やかさ – 良い睡眠をとり、心を落ち着かせ、目的を持って生きる

これらの8つの領域は、脳の健康と精神的な健康をサポートし、認知機能の低下や認知症、アルツハイマー病の発症リスクを減らす可能性を目的として策考案されています。この8つの領域は、認知機能テストを完了する際に、個人の認知機能と共に評価されます。

各領域は「赤、オレンジ、黄、緑」の評価で示され、どの領域に最も注意を払うべきかが分かるようになっています。これにより、将来の認知症予防に役立てることができます。各領域の評価を組み合わせて、全体の認知症リスク指数（DRI）が算出されます。DRIは、100%が最もリスクが高く、0%が最もリスクが低いことを示します。

多くの保健当局、例えば英国栄養士協会（BDA）は、公的医療サービス（NHS）のガイドラインに沿って、認知症やアルツハイマー病のリスクを減らすためのいくつかの重要な戦略を推奨しています。これには、健康的な食事を摂ること、適切な体重を維持すること、定期的に運動すること、アルコールを過剰に摂取しないこと、喫煙をしないこと、血圧を健康的なレベルに保つことが含まれます。さらにNHSは、孤独感や教育レベルの低下、うつ病などの未治療の精神疾患もリスクを高める可能性があるとしています。Food for the Brainでは、最も科学的根拠があり、かつ実行しやすい介入方法に焦点を当てています。例えば、ビタミンB群を使ってホモシステインを低下させることや、最適なオメガ３DHAを確保することは、リスクを減少させる最も強力なエビデンスを持ち、さらに実行が容易な方法です。当科学諮問委員会のメンバーである上海・復旦大学のジン・タイ・ユウ教授が実施した最も大規模で最新のメタアナリシスでは396件の研究を分析しました。その結果、「ホモシステインを低下させる治療」［ビタミンB群を用いたもの］が、アルツハイマー病予防のための最も有望な介入方法である」と結論付けられました。

また、糖尿病であることや高血圧であることがリスク要因であるからといって、血糖値を下げるためのインスリンや血圧を下げるための降圧薬を服用することが必ずしも効果があるわけではありません。既存の研究によれば、その効果はわずかです。Food for the Brainでは、例えば糖尿病や高血圧の主な根本原因に対処することに重点を置いています。これには、過剰な炭水化物や高グリセミック負荷の食事、運動不足、ビタミンCからマグネシウムに至る特定の栄養素の不足が含まれます。これらの栄養素の最適な摂取量は、糖尿病、心血管疾患、高血圧のリスクを減少させることが示されています。

一部の既知のリスク要因が含まれていないように見えるかもしれません。例えば、肥満はその一例ですが、これは「高炭水化物 & 高GL（グリセミック負荷）」や「運動不足」の結果であり、認知症リスク指数（DRI）に含まれます。また、変更できない要因、例えば幼少期に低い教育を受けた場合などはDRIの計算には含まれていませんが、「活発な思考」を促進するための行動は含まれています。頭部外傷がリスク要因であることは知られていますが、変更できないためこれも含まれていません。その他の可能性のあるリスク要因として、ウイルスや細菌感染、自己免疫疾患、毒性物質への曝露などがありますが、アルツハイマー型認知症との関連に関する十分な証拠が揃うまで含まれていません。